『典獄と934人のメロス』12月2日刊行

tengoku
取材30年余り、執筆に要した年月は3年10ヶ月
 多くの人たちから情報をいただき、関係者からは特段の取材協力をいただきました。拾い集めた事実を取りまとめ、取捨選択し、読み物にまとめてくださったのは、2人の辣腕編集者でした。幸運というより、敷かれていた道をまっすぐ歩いて刊行に至ったという感想です。さて、本書のタイトルに用いた「メロス」は、言うまでもなく太宰治の「走れメロス」から取っています。

日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。(太宰治『走れメロス』より)

メロスは人の心を失った暴虐の王に対して友との信頼を証明するために走りました。本書のサキは兄の信頼を守るために走り、横浜刑務所の解放囚は典獄(刑務所長)の信頼に応えるために走りました。
 一方、私は運命めいた人のつながりによって走り、本書の刊行にたどりつきました。